ソフトバンク・柳田や楽天の則本に並ぶ球界史上最長タイで、球団史上初の7年契約。「長くこのチームでプレーして欲しい」という真っすぐなメッセージは、真っすぐに山田哲のハートを射貫いていた。年俸は現状と変わらぬ5億のままで、7年間で計35億円、プラス出来高とみられる。FA市場に出ればさらなる好条件を提示される可能性が高かったが、取得した権利を行使することなく残留という結論に至った。
山田哲、小川、石山。チームは今オフ、3選手がFA権を行使する可能性を持っていた。チームの顔で打線の主軸、エース、そして守護神。2年連続最下位のチームが浮上するためには、一つも欠かすことはできない。ある球団幹部は「今年のうちは自分のチームにいる3選手を残留させることが、一番の補強になる」と真剣な表情で語っていた。それほどまでに、重要任務と位置づけられていた。
選手たちも感じ取っていた。山田哲はFA取得直後から「僕の話が長引けば、球団に迷惑がかかるから」と周囲に明かしていた。別の関係者によれば「(21日に始まる)日本シリーズ中に自分の報道なんかで迷惑をかけたくない」という球界全体への思いもあったという。11月18日。山田哲が決断を下すには、この日がリミットであり、最も適した日だったのかもしれない。